ゴールデンサークルツアー

日本で個人旅行者必携のガイドブックといえば「地球の歩き方」 でもその「地球の歩き方」ですら、アイスランドのガイドブックは出していません。事前に旅行情報を手に入れるのがとても難しい国でした。

でも、アイスランドへ行ってみて、観光に関するシステムが非常にしっかりしている国だということが分かりました。昨日行ったインフォメーションも充実していましたし、ツアーもバラエティ豊か。ツアー会社はホテルからの送迎 もきめ細かく対応してくれますし、快適に観光ができます。

アイスランドの前に滞在したロンドンやこの後行ったNYでも、アイスランド旅行の広告をたくさん見ました。私自身、日本で大使館主催の説明会に参加しましたし、官民挙げて観光業を盛り上げようとする意識が高いようです。

日本では「最果ての国」という印象の旅先ですが、大変な観光先進国です。治安も最高ですし、旅行先として大変お勧めできる国だと感じました。

今日は数あるツアーの中から、オーロラツアーと並んで人気が高い、ゴールデンサークルツアーに参加することにしました。よく考えられた、盛りだくさんのツアーでした(^-^)

おうちごはん

今日のピックアップは8:30。いくつかのホテルを回って参加者をピックアップするので、遅れると迷惑をかけます。早めに起きて、昨日ボーナスで購入した食材を使い朝ごはん。
栄養の偏りはこの際気にしない!

ピックアップの車は約束の8時30分にはもうアパートの前に待機していました。急いで乗り込み出発です。今日のツアー客は13人とのこと。あまり大勢で回るのは嫌なので、小さな会社にお願いしたのですが、結構な人数です。

あちこちのホテルで乗客を乗せ、座席は満席。9時過ぎにレイキャビクを出発です。

レイキャビク中心部から15分ほど走ると、あたりはすっかり原野。雪の間から、黒々とした火山性の大地が見えています。

今日は午後から雨の予報。ツアーの順番を入れ替え、シンクヴェトリル国立公園からまわるとの説明がありました。
ツアーのガイドは女性。海外からの移住だそうです。まずは名前と共にアイスランドの名字の説明。アイスランドは姓にあたるものがなく、名前の後に父親の名前を変形したものをつけるそうです。太郎さんと明子さんの娘花子さんなら「ハナコ・タロウドッティル」。息子の一郎さんなら「イチロウ・タロウソン」が名前になります。

彼女もアイスランドに来た時、アイスランド風に名前を変えることを薦められたとか。父親の名前だけ残すのは嫌なので、母の名前も入れ、「ハナコ・アキコタロウドッティル」というような名前にしたと言っていました。本名も聞いたのですが、両親の名前を入れたことでものすごい長さになっていて、思わず乗客から、「覚えられない」と笑いが起きてしまう状態でした。私もまったく覚えられませんでしたよ~(笑)
名前を変えないという選択肢もあったようですが、やはり「名前を変えないと何かと不便があります…」と言っていたので、よそ者というように見られるのかな。そんな口ぶりでした。
歴史や文化など、幅広く、真面目にきっちりとガイドをしてくれました。ありがとうございます(^-^)

レイキャビクからシンクヴェトリルまでは50kmほど。火山についての説明など、あれこれ聞いていると、あっという間にビジターセンターにつきました。

ビジターセンターにはシンクヴェトリル国立公園のジオラマや周囲の地形の説明のパネルがあり、現地を歩く前の予習にピッタリ。新しくて明るい建物です。

でもちょっと割高かなぁ。アイスランドの観光地、どこにでも言えることですが、原野に観光地がぽつんとあるので、価格競争が全くないためか、非常に割高です。お土産は街で買った方がいいかも。

ただ、高いのに、とっても素敵なものがあって、欲しくなっちゃうのが辛いところ。母は最近ラトビア風のミトンに凝っていて、今回の旅用に二つ編んだのですが、ここでも売っていました♪細かい模様が編み込まれ、ものすごく可愛いですよね~!

ちなみに母が心を打ち抜かれたのが左の本。ミトンの紹介だけでなく、ラトビアについてもいろいろ載っていて、写真もいっぱい。何もかも可愛いのです。そして作ったのが右の写真のミトンです♪(オレンジのミトンの編み図はこちらの本から)帰国後撮ったので汚れちゃっているけど、とっても暖かいんですよ~。話がそれますが、すごくお薦めなので(^-^)手芸が好きな方はぜひ!

話を戻して…ここで車を停め、外に出ます。まずはガイドさんの説明。

シンクヴェトリル国立公園の見所は二つ。大地の割れ目ギャウとここで開かれた世界初の民主議会アルシングです。
ここはプレートの境目が地上に露出している大変珍しい地形で、道の左側が北米プレート、右側がユーラシアプレートになります。今でも毎年2cmずつ広がっていて、ここで生まれた新しいプレートが遠く日本でまた沈んでいくわけです。今私たちが立っている地面が、いま日本のある場所まで行くのにどのぐらいかかるのかなぁ。気が遠くなりそうですね。
どんどん大きくなっていくアイスランドの輝かしい未来の話もありました(笑)

説明が終わると、プレートの上から、割れ目の中へ続く道を各自降りていき、遊歩道を通って下にある駐車場で集合になります。

こちらが北米プレート。荒々しい、地球の力を感じる断面です。

北米とユーラシアプレートの分割に力を貸している長男(笑)

この辺りはアルシングが開かれる夏、全島から召集されたアイスランド人が、仮設の小屋やテントを作り過ごしていたところです。

降りていくと、下には川が流れています。ただし、全面氷結。この割れ目に沿って、アイスランドで一番大きなシンクヴェトリル湖もあります。

遊歩道はこんな感じ。整備が行き届いていますね。

アルシング(全島集会)が開かれたのは930年。身分にかかわらず、全島から代表者が招集され、2週間の会議が開かれました。アルシングは13世紀にノルウェーの支配下に入るまで続きました。アルシングが開かれなくなった後も、ここは法廷として利用され、それは1733年まで続いたそうです。1000年のキリスト教受け入れの決定や1944年アイスランド共和国成立の宣言もここで行われたとのこと。まさにアイスランド発祥の地なんですね。
こんなところで…と思いますが、ここで開いたのは、声が反響し聞きやすいからではないかとガイドさんが言っていました。

アルシングが開かれた場所にはポールが立っています。アイスランドの独立を祝うお祭りのときにはこのポールに国旗が掲揚されるとか。
見にくいけど、写真中央に白いポールが写っています。

下に降りるとあちこちに裂け目(ギャウ)があります。ギャウには雪解け水が流れ込み、ものすごい透明度。ビジターセンターでは、この透明度の中を泳ぐマスの映像も見ることができました。

あまりの透明度の、ついお金を投げ入れたくなっちゃうけど、「禁止」の看板がありました。でも、そうした気持ちは世界共通のようで、水底はこの通りです(^^;

ゲイシール

続いて向かうのはアイスランドを代表する間欠泉、ゲイシールです。英語で間欠泉を意味するガイザー(Geyser)はこのゲイシールからきています。

もともとあったゲイシールは大ゲイシールと呼ばれる間欠泉で、70mも蒸気を吹きだす巨大なものだったそうですが、長く活動を止めていました。2000年の地震で活動を再開しましたが、往時の勢いはなく、時折噴出する程度。観光客が目にするのは難しいとのことでした。
その代りと言っては何ですが、現在は脇にあるストロックル間欠泉が頻繁に活動しています。蒸気の噴出は20mほどですが、5分に一度噴出するという、時間のない観光客には嬉しい設定となっています(^-^)

ビジターセンターで車を降り、荒れ地を歩いていくと、あちこちに蒸気が噴き出しているのが見え始めました。

中でもひときわ大勢の人が集まっているところが。あれがストロックル間欠泉のようです。

吹き上がったばかりだから、次が来るのに5分ぐらいかかるかな。吹きさらしの中で待つのは辛い。ふと見ると長男がたなびく蒸気で暖をとっています(笑)

とにかく寒いので、みんな早く見てビジターセンターに引き上げたい(笑)
ふつふつと湧き上がってきたかな、と思うと、そのまま終わるなど、間欠泉のフェイントにムカつきながらも待ちます。

しばらくすると今度は本格的に泡が湧き上がってきました。くるか、くるかっ?!

そして見る見るうちに水が盛り上がりました!

表面張力を突き破るように、白い蒸気が立ち上ります。

20mほど蒸気が上るとのことでしたが、この日は風が強く、横に流れちゃっています。しかも、最高の瞬間は撮れず。ちょっと離れたところから。

噴出が終わると、あたりの水が一気に中央の穴に流れ込んでいきます。

音がないので、今一つ迫力が伝わらないかなぁ。擬音で表現すると「ぼこっ、ぼこっ、ぐ、ぐっぐぉぉぉぉ~~~~~、ぶしゃああああーーー!」って感じです。

いや~~、すごい。動きにメリハリがあっていいですよね。それと印象的だったのは、水の美しさ。薄い緑色の水が柱のように盛り上がる様は、間欠泉の迫力よりも印象に残っています。

母はじっくり見ていたかったのだけど、寒さのあまりとっととビジターセンターに向かう家族たち。100度で噴出した蒸気が寒さであっという間に凍り、路面はアイスバーンになっています。

ビジターセンター

ゲイシールの前にあるビジターセンターではカフェテリア形式で軽食を食べることができます。お土産物も売っていました。
おなか減りました。さっそくごはんだ!と勢いづく私たち。…ところがここ、ものすごく高いです。たとえば温かいスープ一杯が1500円ぐらいでしょうか。軽食程度のサンドウィッチもすべて1000円ぐらい。今までで一番の暴利ぶりです。ビールを飲もうとする男性陣を厳しく制し、比較的リーズナブルだったパンと水で食事です(悲)

席に座ると「持ち込み禁止」の注意書きがありました。面白かったのが、英語、それとなぜかドイツ語で書かれていること。
「こんな不当な値段に、ドイツ人が黙っているはずない。何も買わず、持っているものを食べるドイツ人が続出したに違いない」とは、ドイツ語を習っている長男の弁です(笑)

値段はともかく、ここもまたかわいいお土産がいっぱいでした。店内のディスプレイもとてもかわいい♪見ているだけでも楽しくなっちゃいます。

食事が割高だったせいで、「他のものも不当に高いのではないか」という疑念が湧き、結局何も買わずじまいでした(^^;
でも、きっと物がいいのでしょうね。ここのアイスランドセーターのデザインが、滞在中見た中で一番良かったです(じゃあ買えという突っ込みは無しでお願いします)

グトルフォスの滝

お土産屋さんを冷やかした後、次に向かうのはグトルフォスの滝です。グトルフォスとはアイスランドで「黄金の滝」 陽の光を受けると、滝が黄金に輝くことからつけられました。
お天気だったら素晴らしかったのでしょうが、何とか持っていた天気がここに来ていよいよ崩れ、雪が降ってきました。観光は次第に過酷さを増していきます(^^;

この滝には興味深いエピソードがあります。20世紀の初め、ここに外国資本で水力発電所を作る計画が持ち上がり、滝もダムに沈む恐れが生じました。近くに住んでいた滝を愛する少女がその話を聞き、「発電所を作るなら、滝に身を投げる」と発言。結局発電所建設は見送られることになりました。滝を守った少女として、ほとりにレリーフが建てられています。

滝の傍にある駐車場に車を停め、各自遊歩道を滝に向かって歩きます。マフラーを首に巻いて車を出ようとしたところ、「顔まで巻いた方がいいわよ」とガイドさん。

「どうして?」と思いながら外に出ると一層暴風が強くなっていました。しかもその風に乗って、雪とも周囲の砂粒ともつかないものが顔にあたりものすごく痛い!!
メガネがあるから目は守られるものの、無かったら目を開けるのも大変そう。とにかく目の前に砂かけ婆でもいるような勢いで、何かが顔にあたるんです~!これは顔にも巻かねば。大変だー!

慌てているとガイドさんが、「それでも昨日よりましよ」と苦笑していました。ひぇぇぇ、これより酷いって、昨日はどんな地獄が繰り広げられたのでしょうか。

途中遊歩道が二股に分かれ、滝に近い方は通行止めになっていました。それはそうです。この風で滝に近寄るのは自殺行為。通行可でも行きません(^^;
※赤い矢印のところが通行止めに。

遊歩道を歩いていくと、どんどん風が強くなっていきます。風の音もすごく、横にいる家族と話をするのも大変。

何かと戦っているような心境で、遊歩道の先端まで着きました。過酷な環境であることは変わりないものの、やはりものすごい絶景。横幅70m、落差30mの滝が、半分凍り、凍っていない部分は轟音を立てて滝壺に流れ込んでいます。

これはすごい。絶景という言葉を、ここで使わなくていつ使うのか!という感じです。

しかしすごい風。手すりにつかまっていないと飛ばされそうです!それでも必死に撮影をしていると、母のメガネが風でびゅーーんと飛ばされました~(◎_◎;)
幸い3mほど離れた外人に踏まれ(!)滝に落ちるのは免れましたが、どれほどの風か分かっていただけるでしょうか。メガネもコストコ製の丈夫なものだったので無事でした~♪

とにかくすごい迫力。この滝は必見です。尋常ではない暴風と合わせて、忘れられない体験になりました。

アイスランドの馬にエサやり

これでメインの観光地はまわりました。とにかく圧巻の大自然。アイスランドって、本当にいい所です。感動のうちにレイキャビクに向かって出発です。
途中、小さな、と言っても結構な大きさなんですが、滝に寄りました。グトルフォスを見た後だとまあ、滝も気の毒ですよね(笑)

傍にある商店でトイレ休憩。奥の壁に下がっているのは蹄鉄です。いかにも地元向け。ガイドさんもここは安いと言っていました。観光客用と、地元用で値段が違うんですよね。まあ、仕方のないことですが。

その後、牧場に行って、さっきのお店で買ったパンを食べさせました。パンでいいのでしょうか?(笑)
道産子のような小ぶりの馬で、寒さに耐えるため毛が長めです。アイスランドの人は馬をとても大切にしているということです。優しい目をした愛らしい馬でした♪

これで大満足のゴールデンサークルルアーは終了。ホテルに戻ります。
昨日駄目だったオーロラツアーを今日に振り替えてもらっているのだけど、この天気では無理かな。まあ、なんとか一日天気が持っただけでも良しとしなくちゃね。

パフィンの置物

ホテルに戻り、オーロラツアーの連絡を確認。中止のメールが来ていると思いきや、ありません!
ええ~~~?!もしかして催行?!
実はこの日、いつも見ているオーロラ情報サイトで「オーロラ爆発(STORM!)」という予報が出ていたのです。もしかして晴れている地域があるのかも。

中止だと踏んで、今日の夜は創作寿司を食べに行く予定でいました。アイスランド在住の日本の方のブログで発見したRub23というお寿司屋さんで、ピザ寿司など、日本人には考え付かないようなユニークなメニューがあり、ぜひ、と思っていたのです。

でも、寿司なら日本でも食べられる。オーロラ爆発を見られるのなら、諦めるしかない。急きょ予定を変更し、ツアー参加に備えます。
明日はアイスランドを発つ日。まずは先にパッキングをしておきましょう。アイスランドで買った大量のお土産を、機内持ち込みにするために、仕分け作業です。
ところが・・・なんと、昨日買ったパフィンの置物が見当たらない! 店主の方とのお話が盛り上がり、全員が商品を受け取るのを忘れていたんです~~( ゚Д゚)

最も気に入っているお土産なのに。作業を全部中断し、とりあえずお店に行ってみることに。しかし何とお店はもう閉店。ああー万事休す!と思ったら、店のドアにメッセージが貼ってありました。

 日本から来たゲストへ。荷物を忘れています。この番号に電話をしてください

なんと・・・なんかじーんとしちゃいました。小さな置物を一個買っただけの観光客のために…。

ご厚意を無駄にしないために、急ぎホテルに帰り、電話します。電話に出たのは店主のお友達でした。私たちが去った後、あたりを探してくれたけれども見つからず、一度長男を見かけて声をかけたけど、気づかず行ってしまった。店主は今日予定があるので、友達にお土産を託した、ということでした。

明日発つことを告げると、お友達が店まで持ってきてくれるとのこと。ありがたい…。
お店の前で待っていると、驚いたことに走ってきてくれました。「渡せてよかった。彼も喜ぶよ!」と笑顔。

今でもパフィンの置物を見るたびに、この時のことを思い出します。かわいいパフィンに素敵な思い出が追加され、最高のお土産になりました。


ご迷惑をかけてごめんなさい。そして本当にありがとう。

夜ご飯

そうした顛末で、すっかり時間が無くなってしまいました。私がやり取りをしている間、子供たちは必要なお土産を買いに行き、夫は夕食のお弁当を購入。
食べられなかった創作寿司の替わりに、パック詰めの巻き寿司です。うーーん、無念!
味は家族の顔色から察してください(笑)

なんとかやるべきことを終え、8時半のピックアップになりました。迎えの車を待つけど来ない。電話をしてみました。なんと、ここまで大騒ぎをしたにもかかわらず、催行は中止とのこと。中止を知らせるメールが手違いできていなかったのでした。

うわわわわー、じゃあ、せめて寿司を食べたかった。まあ、仕方ありません。呆然としながらも、夜のレイキャビクを散策しつつ、光の少ない港へオーロラを見に行ってみることに。

夜のレイキャビク

ぶらぶらと街を散策。夜に歩いていてもまったく危険を感じないところも、素晴らしいです。アイスランドの大ファンになった長男は手袋を購入。

かわいい色に塗られた家々が、ライトアップされ、昼とは全く違った表情を見せています♪

昨日訪れたハルパにもまた行ってみました。イルミネーションが幻想的。とても素敵です。

さらに歩き港に出て、一生懸命目を凝らすのですが、オーロラは見えませんでした。雲は厚いようです。
でも、写真に撮ると、かすかにグリーンの光が写っているように見えるんですよね。
この厚い雲の向こうではオーロラ爆発が起こっているのかな…と思うと、恨めしい気持ちもしますが、もう充分楽しんだし、大満足です。これ以上は望みません。
アイスランド最高!!明日発たなくちゃいけないなんて・・・もっといたいよ~(/_;)

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